The Innovator's DNA: Mastering the Five Skills of Disruptive Innovators、Jeff Dyer、Hal Gregersen、Clayton M. Christensen、Harvard Business School Pr、p.304、$29.95
「イノベーションのジレンマ」で知られるClayton M. Christensenなど3人の大学教授の手によるビジネス書。8年間の調査研究の成果という。本書の主題は「イノベーションはどうやって生まれたのか」「我々は、どうすればイノベーションを生み出せるのか」で、破壊的イノベーションを生む秘訣を事例に基づき論じる。画期的な議論を展開している感じはしないが、米国のビジネス書らしく、多くの事例や調査で裏付けをとっており読み応えはある。ただし、そのうちに翻訳が出ると思われるので、慌てて原書を読む必要性は感じない。
筆者によるとイノベーティブな起業家は、一見関連がなさそうな事柄のあいだに関係性を見つける能力に長ける。その関係性からイノベーティブな製品やサービスを生み出すという。このほか、違和感がイノベーションのスタート、イノベーションには人材の多様性が不可欠、イノベータの能力はT型(特定分野における深い専門知識と幅広い興味)など、興味深い指摘が多い。ちなみに、生まれつきの才能がなければイノベータになれない訳ではなく、努力すれば身に付く。誰でも五つのスキルを磨けば破壊的イノベーションを生むことが可能と論じる(ビジネス的に成功するとは無関係だが…)。
ここでいう五つのスキルとは、Associating(関連づけ)、Questioning(探究心)、Observing(観察眼)、Networking(人的ネットーワーク)、Experimenting(実行力)である。これらのスキルの鍛え方について、それぞれ1章を割いて詳述する。特に印象に残ったのはQuestioningとExperimenting。前者ではブレストならぬQuestionStormingの重要さ、後者では自ら手を動かすかどうかがイノベータと非イノベータの差だと説いている。
興味深いのはイノベーション企業ランキング。過去の実績だけではなく、将来的にイノベーティブな企業かどうかを評価するための指標を筆者らは作成した。正しいかどうかは歴史が判断することになるが、1位はSalesforce.com、2位はIntuitive Surgical、3位はAmazon.com、4位Celgene、5位Apple。Googleは6位である。ちなみに過去の実績に基づくBusinessWeek誌のイノベーション企業ランキング(1位Apple、2位Google、3位Microsoft、4位トヨタ、5位GE)である。