清貧と復興〜土光敏夫100の言葉〜、出町譲、文藝春秋、p.288、¥1400
石川島播磨重工と東芝で社長を務め、経団連会長や第2臨調会長を歴任した土光敏夫の箴言・至言をまとめた書。100件の発言と背景説明で構成している。キリのいい100にこだわったせいで、後半部が息切れ気味なのは少し残念。短く・鋭くで十分に著者の思いは伝わったように思う。
土光の発言からは、人間としての気骨と迫力、自信が、言葉に乗り移っている感じがする。没後20年あまりになるが、言葉はまったく色あせていない。日本の政治・経済・社会に対する危機意識は強く、いまなお通用する警鐘が並ぶ。しかも実行を伴っていたところが、土光の真価だろう。本書を読むと、この20年間、われわれは何をやってきたのだろうとの思いを強くする。
城山三郎は土光を「一瞬一瞬にすべてを賭ける、という生き方の迫力。それが八十年も積もり積もると、極上の特別天然記念物でも見る思いがする」と称したという。多くの経済人を見てきた城山にこう言わしめる人間力はちょっと凄いが、本書を読むと理由が分かる。ここ数年、筋が通らない、腰が据わらない、言いっ放し、見識を疑うといった場面に散々出会ってきただけに、本書は一服の清涼剤である。