ナチを欺いた死体〜英国の奇策・ミンスミート作戦の真実〜、ベン・マッキンタイアー著、小林朋則・訳、中央公論新社、p.469、¥2625


 とてもノンフィクションとは思えない、奇妙きてれつな第2次世界大戦時の話。実に面白い。連合軍がシチリア島への進攻を企てたときに、上陸ポイントについてドイツ軍に偽情報をつかませて作戦を成功させた「ミンスミート作戦」の舞台裏を詳細に描いている。「現実は小説よりも奇なり」を地で行ったようなストーリーで、400ページを超える大著だが気にならない。充実した写真も見所の一つである。
 ミンスミート作戦に関しては、立案したモンタギュー自身によるベストセラー「実在しなかった男」(映画化もされている)があるが、筆者によると内容には英国政府の検閲が入っており、必ずしも史実に忠実とはいえないという。本書は、機密解除になった公文書とインタビューをもとに、第2次世界大戦の行方を左右したミンスミート作戦を詳述する。
 ミンスミート作戦とは、英国情報部がドイツ軍を欺くために立てた奇策。一般人の死体を高級将校に仕立て、あたかも極秘文書運搬時に航空機事故で溺死したように見せかけてスペインの浜辺に漂着させる。ドイツ軍に信じさせるために英国情報部があれこれ手を打つ。いずれも芝居がかっていて(映画のようで)楽しい。