アイスマン〜史上最大のサイバー犯罪はいかに行なわれたか〜、ケビン・ポールセン、島村浩子・訳、祥伝社、p.311、\1680


 「アイスマン」と呼ばれた悪玉ハッカーを追ったノンフィクション。アイスマン(本名はマックス・バトラー)は、小売店のサーバーなどに侵入して200万件にのぼるクレジットカード情報を盗み出し、懲役13年の刑を受けた。本書は、かつてFBIの捜査に協力する犯罪者情報提供者だったアイスマンが、クラッキングを繰り返す犯罪者になり、ついには逮捕されるまでの軌跡を克明に追っている。著者はハッキング行為で有罪判決を受けたことがあるジャーナリストなので、犯行の手口に関する記述はかなり詳細。インターネットの裏側でどのような世界が展開されているのかを知ることができる1冊である。
 本書は、クレジットカード情報を売買する闇市場の実態を克明に描く。アイスマンは「カーダースマーケット・コム」を運営し、盗み出した個人情報を販売した。売り上げは1日に1000ドルに達した。クレジットカード詐欺師は、この情報をプラスチックカードに書き込み、本物と見まがう偽装を凝らす。キャッシャーと呼ぶ手先がクレジットカードを使って買い物をし、ネットオークションで売りさばく。被害総額は8600万ドルに達するという。
 最大の見所は、アイスマンとFBIの駆け引きだろう。FBIの捜査官が偽の肩書きでアイスマンを騙し、徐々に追いつめていくところは読み応えがある。善玉ハッカーだったアイスマンが、犯罪に手を染めていくまでの過程も興味深い。