限界集落の真実〜過疎の村は消えるか?〜、山下祐介、ちくま新書、p.285、¥924


 限界集落と聞くと、高齢化が進み、いずれ消滅していく過疎地域といった印象を多くの方が持つのではないか。本書はこうした定説を、地域社会学者の著者が現地取材をもとに否定した書。ここでいう限界集落とは、65歳以上の高齢者が人口の半数以上を占め、独居老人世帯が増加したために社会的共同生活の維持が困難になっている地域を指す。この定義に合致した限界集落は存在するものの、高齢化が理由で消滅した地域は皆無であることを筆者は明らかにする。
 筆者が歩いた限界集落は全国に散らばる。本書でも、青森県秋田県岩手県新潟県京都府島根県高知県、鹿児島県を取り上げ、その実態を紹介する。共通しているのは、高齢化が進んでいるものの「ここに生きる」意志と努力の強さ。そう簡単に集落は消滅しないことを筆者は確信する。政府は2007年に191の集落が消滅したことを明らかにしたが、その理由はダム建設による移転や自然災害などによるもの。高齢化が理由ではない。同時に「限界集落=悲惨」と危機を煽るマスコミの取り上げ方を厳しく批判する。そもそも限界集落は、2007年の参議院選挙絡みでマスコミによって作られたものと断じる。
 問題は、ここに生きる意志と努力が強い昭和一桁生まれ世代が去ったあと。親を気遣い近隣に住む息子世代を集落に引き戻し世代交代を行わないと、村落の消滅が現実化する。筆者が勧めるのが「集落点検」。限界集落外に住んでいる家族に、地域の良さを再確認させる試みである。キッカケさえあれば、家族は戻ると強調する。示唆に富む提言にあふれた書である。