僕は君たちに武器を配りたい、瀧本哲史、講談社、p.296、\1890


 京都大学客員准教授が、社会人として生き残るための知恵を20代の若者に授けた書。どのような企業や業界に気をつけるべきか、どういった人材になるべきかを論じている。筆者は、マッキンゼーでのエレクトロニクス業界向けコンサルタントを経て、現在はエンゼル投資家として活動。コンサルタントらしい整理整頓された書き口と投資家経験に基づいた社会観が本書の売りである。変化の激しい高度資本主義社会のなかで生き残るには、状況に応じて臨機応変に戦術を変えるゲリラ戦を展開すべきだとアジる。切り口が明確で読みやすい書だが、ビジネス書によく目を通すベテラン社会人からすれば目新しい内容は多くない。
 筆者は、学生に人気のあるスキル「英語」「ITリテラシー」「簿記」を学ぶことに意味はないと主張する。必要なのはスペシャリティ。オンリーワンの存在にならないとコモディティ化するだけで、結局は賃下げの渦に巻き込まれると警告する。資本主義社会のなかで安い値段でこき使われずに、主体的に稼ぐ人間として六つのタイプを挙げる。トレーダー、エキスパート、マーケター、イノベーター、リーダー、インベスターである。ただし、右から左へとモノを動かすトレーダーと、変化の激しい資本主義社会におけるエキスパートは価値がなくなると予測する。
 本書で目につくのはメディア批判。「メディアの情報をそのまま信用するな」「記事を鵜呑みにすることは、投資家としてもっともやってはいけない」「まったく金融が分からない奴が書いている」など、強烈なパンチを繰り出している。