メディアと日本人〜変わりゆく日常〜、橋元良明、岩波新書、p.224、¥798


 1995年〜2010年までの「日本人の情報行動調査」に基づき、日本人が新聞・ラジオ・テレビ・インターネット・書籍といったメディアとどのように関わってきたか、生活がどのように変化したかを論じた書。テレビ離れや書籍離れは本当か、メディアは子供に悪影響を与えるのか、といった観点からも議論を展開する。ページ数に限りがある新書なので深みはないが、メディアの誕生と普及、現状などをざっと知るうえで役立つ。
 本書の特徴は、データに基づいてメディアに関する思い込みを覆しているところだろう。例えば読書離れ。出版不況で書籍の販売額は減少しているものの、読書離れと騒がれるほどには読書時間は減少していないことを本書は明らかにする。筆者は、インターネットの影響を比較的受けていないメディアとして書籍を挙げる。これは新聞とは対照的である。新聞を読む時間は、1995年と2010年を比べた場合、30代で24.5分から8.9分、40代で32.2分から14.4分と激減している。
 仕事に役立つメディアのランキングも興味深い。2000年は書籍>新聞>テレビ>雑誌>ラジオの順。これが2010年には、インターネット>書籍>テレビ>新聞>雑誌>ラジオと変化する。インターネットがトップというのもインパクトがあるが、新聞がテレビに抜かれているのは考えさせられる。インターネットのアクセスがPCか携帯かで、行動パターンが大きく異なるという指摘も面白い。PCネット・ユーザーは社交性がなく、携帯ネット・ユーザーは社交的傾向が強いという。政治的関心があり政治を難解と感じていないのがPCネット・ユーザーで、政治的関心がないのが携帯ネット・ユーザーというデータも本書は紹介する。