統計学が最強の学問である〜データ社会を生き抜くための武器と教養〜、西内 啓、ダイヤモンド社、p.320、\1680
ビッグデータへの関心の高さが影響したのか、あるいは刺激的な書名や挑発的な語り口が奏功したのか分からないが、ベストセラーになっている書。統計学が最強な理由について研究成果と事例をたくみに用いながら論じている。帯には「入門書」とあるものの、ハッキリ言って難しい。評者は大学の教養で統計学を履修したが、それでも後半部は少々辛い。統計学について何の知識もないと、読みこなすのは骨だろう。もっとも前半を読むだけでも、十分に読者と筆者の目的は達せられるように思う。時代が要請した書籍なのは間違いないので、進めるとこころまで読み、分からなくなったら諦めることをお勧めする。
前半部では威勢のいい文言がぽんぽん飛び出す。「統計学を制する者が世界を制する」「統計学は最善最速の正解を出す」「すべての学問は統計学のもとに」「これから10年で最もセクシーな職業」などと筆者は自信満々だ。本書の読むことの意義や重要性を読者に徹底的に刷り込む。紅茶やコレラの話など、事例の使い方も秀逸である。ビッグデータがもて囃されるなか、何が知りたいかを明確にすればスモールデータで十分と言い放つ切れのよさも筆者の持ち味である。
ちなみに本書が扱うのは大きく六つの分野。具体的には、社会調査法、疫学・生物統計学、心理統計学、データマイニング、テキストマイニング、計量経済学について解説している。