「空気」の構造: 日本人はなぜ決められないのか、池田信夫、白水社、p.240、\1680


 日本人の意思決定の構造を、山本七平の「空気の研究」や丸山眞男の言説にもとづいて論じた書。日本の企業や政治の「決められない」「変革できない」症候群の根本原因を探っている。名著「失敗の本質」を現代に当てはめて解説している感がある。精神主義が跋扈し兵站を無視した日本軍の犯した失敗を繰り返している日本の姿を浮き彫りにしている。事例は満州事変から福島原発事故までと広範だが、著者のブログ同様に切り口が鮮明で読みやすい。一読をお薦めする。
 筆者は、毎年のように首相が代わり、歳出が際限なく膨張する日本の政治と、グローバル資本主義のなかで大胆な事業再構築ができない日本企業とのあいだに共通の欠陥を見る。具体的には、責任の所在が曖昧で中枢機能が弱い。そのため利害の対立する問題を先送しがちになる。現場が強く部分最適に陥り、放置すると破綻が目に見えているのに変えられない。全体最適の視点がスッポリ抜け落ちる。本書はこうした状況を、これまでに書かれた「日本人論」から探る。