内向型人間の時代〜社会を変える静かな人の力〜、スーザン・ケイン著、古草秀子・訳、講談社、p.360、\1890


 ビジネスパーソンとしては損な性格と思われる内向型。筆者は、この俗説を事例や最新の知見に基づき覆す。内向型だからといって成功するわけではないが、ビジネスに成功するための資質として優れた面が少ないことを説得力をもって論じる。ここでいう内向型人間とは、喋るよりも他人の話を聞き、パーティで騒ぐよりも一人で読書をし、自分を誇示するよりも研究することを好む人間を指す。本書では、ビル・ゲイツガンジーアインシュタインラリー・ペイジ、バフェット、ゴアなどを内向型人間として挙げる。
 筆者は、誰からも好かれる人が理想像になり、カリスマ的なリーダーシップという神話が生まれた経緯を明らかにする。神話が流布して、外向型人間が“成功”に結びつき、内向型人間が“失敗”につながるというハーバード・ビジネススクール的な価値観が世の中を席巻してしまった。しかし筆者は、カリスマ的だとみなされている人物は、そうでない人物と比べて給料は多いが経営手腕は優れていないという調査結果を披露し、神話を否定する。
 ちなみに米国は一般的に外向型人間の国家だと思われているし、米国人(特にビジネスパーソン)はそうした期待を背負わされている。しかし米国人の3分の1から2分の1は内向型だという。一方で外向型が重視される米国では内向型の存在感は大きくない。出世競争でも不利になる。本書は、内向型が直面する問題を明らかにすると同時に、創造性に飛んだ人間は内向的という調査結果などをもとに、内向型のメリットを明らかにする。