聖徳太子と日本人〜天皇制とともに生まれた〈聖徳太子〉像〜,大山誠一,角川ソフィア文庫,p.284,\629

 「聖徳太子は,藤原不比等光明天皇天皇制を確固とするために創作されたもの」。これが筆者の主張である。寡聞にして,これが学会で認知された学説かどうか知らないが,読んでいるとおもしろい。想像力を満開にして自説を組み立てていける古代史の世界はロマンにあふれている。
 筆者は聖徳太子,天寿国繍帳,憲法十七条など,日本史でならった事柄を次から次へと否定していく。儒教,仏教,道教をミックスした聖徳太子像の奇妙さをあきらかにしてく。その議論の進め方は小気味いほどだが,なんだかわだかまりが残る。妙な話だが,学校教育の影響力の大きさが実感できる書である。